2008年12月07日
●シリーズ「結婚前夜」 【2】 仮面を脱ぐY田
会社の同期6人のうち、先陣を切って婚約発表したのはA木だった。それは、ちょうど1年前の冬。独身の自由や裕福さより、やすらぎに包まれた家庭を―。A木の決断は、寒い夜空を照らす温かい知らせとして、多くの仲間の胸に響いた。しかし、Y田(27)は違った。
「は?ケコン?ショーモナッ!」。そう吐き捨て、「家庭」や「やすらぎ」といった言葉を強く否定した。耳障りの良い言葉に心を揺さぶられる仲間たちを奮い立たせ、独身派のトップに躍り出た瞬間だった。
そんな派閥最右翼のY田が、裏切り劇を演じている。旧交を温めていただけのはずだった、大学時代の友人で女性教員のTさんと、頻繁に接触していることが明らかになった。耳を疑うような話だが、事の経緯はこうだ。
2人の関係が友人付き合いの範囲を超えているのではないか、そんな指摘が関係者から出始めたのは、蒸し暑い夏。突然デジカメを買ったり、県外に遊びに行く回数が増えたりと、浮かれぶりが目立つようになっていた。僕の職場に2人で押しかけて来たこともあった。その際、2人で撮った写真がデジカメに収められているのを見逃さなかった。
写真の事実を突きつけ、「つき合っているのか」とただしても、Y田は「まさか、そんなはずが。トモダチトモダチ」と火消しに躍起で、交際関係を認めようとしない。一方、派閥の会員たちは「自分の目と耳で確かめるまでは」と、Y田の言葉を信じた。
ところが11月上旬。信頼はあっさりと裏切られる。徳島空港の近くであったA木の結婚式。車で会場に向かう途中、Y田をピックアップすると、疑惑の女性Tさんも一緒に後部座席に滑り込んできた。行き先は空港方面だというのに、Y田は「徳島駅に寄ってよ」。Tさんを送り届けるから、と続けた。同時に、交際の事実も認めた。昨夜は社宅に泊まっていたという。
かつて派閥に「鉄の規律」を敷き、死ね死ね団の指揮棒を振ったY田。あの寒空の下で、会員たちの心を掴んだ勇姿はどこへ行ったのか。仮面を脱いだ披露宴で、不協和音が鳴る。
つづく
