2009年01月02日

●シリーズ「結婚前夜」 【3】 独身派の没落

大規模和風邸宅を使った結婚式場「樫野(かしの)倶楽部」。邸宅は大正14年に阿南市内で建てられた木造2階建てで、10年ほど前に徳島空港近くに移築された。波打ちガラスや模様ガラスといった大正ロマン漂う建材が使われ、国の有形文化財にも登録されている。そんな気品ある式場で、A木は親族や友人らが見守る中、愛を誓った。

美しい日本庭園で式を挙げた後、大広間で披露宴。同期5人が一つのテーブルを囲んだ。5人とは、A木よりも一足早く入籍したN野(♀)、婚約が暴かれたK辺(♂)、独身派若手のM家(♂)、仮面を脱いだY田(♂)、と僕(♂)。これまでなら、独身派3、結婚派2と独身派が優位で、結婚派のA木を加えたとしても互角に渡り合うことができていた。

しかし、である。

Y田だ。独身派が斜陽に立たされたと感じるや否や、旧友のTさんに忍び寄り、あっさり派閥に見切りを付けた。式場に向かう車中でも、「そろそろ落ち着かんと」などと失言が飛び出す始末。これは造反というより、彼の指導者的立場からすれば背任といっても過言ではない。

「Y田の暴走を告発しよう」。そう心に決めていた僕は、5人が囲む円卓にTさんの話題を載せた。Y田は公式の席でも容疑を認め、事も無げに派閥トップを退く意向を示した。寝耳に水だったM家の手から、ナイフが滑り落ちた。

「ガシャーン」

トップの政権投げ出し。最高指導者を最悪の形で失った独身派は、音を立てて瓦解した。

つづく


Posted by yu-topian at 2009年01月02日 00:49